「失われた30年」と雇用形態の急変
平成から続く「失われた30年」と呼ばれる長期不況は、僕たちの就職の門戸をこの上なく絞り、今では少なくなったとされる採用時における「圧迫面接」や、悪夢のような「ブラック労働」を助長しました。
人によってはそこで根こそぎ自尊心を奪われ、あるいは心身を崩してしまった人も多いかもしれません。
どんな形であれ、僕たちはその時代のうねりに翻弄され、なんとかして安定した雇用を得るために自分を殺して生きてきたはずです。
そのような中でも社会では、人口減少や年金問題、自殺者数の高止まりなどの将来不安が増大し続けました。
そして僕たちはどんなにつらい職場環境でもなかなか別の選択肢を見出すことができず、歯を食いしばって職業人生を過ごす中、いつの間にか中堅スタッフになったころ、時代は急展開を見せ始めました。
“逃げ切れない世代”
喫緊のニュースでは多くの企業が入社後、様々な部署を経験したり、命令されたらどんな業務でもゼロから覚えていくようゼネラリストとしてのキャリアを構築していくという、いわゆる「メンバーシップ型雇用」を終わらせてきています。
その代わりに、初めから専門的なキャリアの人材を必要な部署に配置するという、いわゆる「ジョブ型雇用」が主流となりつつあり、今では「45歳定年説」などのワードが紙面を席捲しているようです。
これはちょうど僕たち「氷河期世代」に重なる年齢ですね。
会社のために文字通り身を粉にして奮闘してきた僕たち世代は、どうやらはしごを外されたようです。
つまり、先輩世代のような「モーレツ社員」の言うとおりにキャリアと年齢を重ねてきた僕たちの存在は、働き方改革やコンプライアンス重視、人件費の抑制が叫ばれる中、“邪魔者”となったというのは言い過ぎでしょうか。
以前の記事でお伝えした例で言うならば、傷ついた自尊心を回復させる時期を、僕たち「氷河期世代」はすっかり失ってしまったことを意味するように思えます。
僕はこれを“アイスエイジ・トラップ”と名付けてみました。
僕たち「氷河期世代」が中年と呼ばれる年代に差し掛かった現在において、今から新たに専門的スキルやキャリアを構築していくことは簡単ではありません。
老後の年金その他の諸問題と重ね合わせて、「逃げ切り世代」とか「逃げ切れない世代」などと区分けしたワードも散見されますが、少なくとも僕たちは「逃げ切れない世代」に入ることになります。
少なくとも職業人生を終えるまでにはまだかなりの時間があるほか、「人生100年時代」が叫ばれることからも、自分の人生や働くということそのものを見つめ直す作業が不可欠になったと言えるでしょう。
これはやはり、学校や社会で教えてもらえなかった「人生観」というものを描きなおす必要に迫られている時代だと言えるかもしれません。
コメント